個人投資家のリアルな体験から学ぶフィンテック活用術

株式トレーディングのワークスペースで複数のモニターを使用する若手プロフェッショナル

「Finance Experience Journal」は、個人のリアルな体験から学ぶことをコンセプトにしています。難しい金融やテクノロジーの話も、誰かが実際にやってみた体験談を通して聞くと身近に感じられ、「自分もやってみよう」と思えるのではないでしょうか。今回は、フィンテックを「使う」だけでなく、「作る」側に少し踏み込んで、投資をもっと主体的にアップデートする方法をご紹介します。

APIを使った投資スタイルのアップデート

ロボアドバイザーやキャッシュレス決済といったフィンテックサービスは便利ですが、もう一歩踏み込んで「API」を活用することで、自分だけの投資スタイルを構築できます。APIと聞くとエンジニアの専門領域に思えますが、Google Apps Script(GAS)のようなツールを使えば、非エンジニアでも比較的簡単に扱えます。

例えば、特定の銘柄の株価が設定した価格以下になったら自動でLINEに通知を送る仕組みを作れば、毎日株価アプリに張り付く必要がなくなり、投資のチャンスを逃しにくくなります。こういった自動化の仕組みは、忙しい現代人にとって非常に有用です。

Google Apps Scriptで株価アラートを作ろう

ここでは、Google Apps Scriptを使って株価が一定の価格を下回ったらLINEに通知を送る簡単なサンプルコードをご紹介します。この仕組みは、スプレッドシートに記録した銘柄コードと閾値を読み取り、条件に合致したら通知を送ります。

実装例:株価監視スクリプト

// LINE Notifyのアクセストークン
const LINE_NOTIFY_TOKEN = 'ここに自分のトークンを入力';

function checkStockPriceAndNotify() {
  // スプレッドシートから監視したい銘柄の情報を取得
  const sheet = SpreadsheetApp.getActiveSpreadsheet().getSheetByName('監視リスト');
  const stockCode = sheet.getRange('A2').getValue(); // 例: '7203.T' (トヨタ自動車)
  const threshold = sheet.getRange('B2').getValue();  // 例: 9000 (円)

  // ここでは株価取得の例としてダミーの価格を使います
  // 実際にはAPIやスクレイピングで最新価格を取得します
  const currentPrice = 8800; // ダミーの現在価格

  if (currentPrice <= threshold) {
    const message = `\n【株価アラート】\n銘柄: ${stockCode}\n設定価格 ${threshold}円 を下回りました!\n現在価格: ${currentPrice}円`;
    sendLineNotify(message);
  }
}

function sendLineNotify(message) {
  const url = 'https://notify-api.line.me/api/notify';
  const options = {
    'method': 'post',
    'headers': { 'Authorization': 'Bearer ' + LINE_NOTIFY_TOKEN },
    'payload': { 'message': message }
  };
  UrlFetchApp.fetch(url, options);
}

セットアップ手順

このスクリプトを実際に使うには、以下の手順で設定します:

  1. LINE Notifyトークンの取得:LINE Notifyの公式サイトからアクセストークンを発行します。
  2. Googleスプレッドシートの準備:「監視リスト」という名前のシートを作成し、A列に銘柄コード、B列に閾値価格を入力します。
  3. Google Apps Scriptにコードを貼り付け:Googleスプレッドシートのメニューから「拡張機能」→「Apps Script」を開き、上記コードを貼り付けます。
  4. トリガーの設定:定期的に実行されるよう、Apps Scriptのトリガー機能で「時間主導型」の実行設定(例:1時間ごと)を追加します。

さらなる進化:リアルタイム株価APIの活用

上記の例ではダミーの株価を使用していますが、実際には株価取得APIを組み込むことで、リアルタイムの株価をもとに通知を送ることができます。例えば、Yahoo Finance APIやAlpha Vantageといった無料または低価格のAPIサービスを利用すれば、本格的な株価監視システムを構築できます。

APIを利用する際の注意点として、以下のポイントを押さえておきましょう:

  • 利用規約の確認:各APIサービスには利用制限があります。無料プランでは1日あたりのリクエスト数に上限があるため、適切な実行頻度を設定しましょう。
  • データの精度:無料APIは数分から数十分の遅延があることが一般的です。デイトレードのようなリアルタイム性が求められる場合は有料プランの検討が必要です。
  • セキュリティ:APIキーやアクセストークンはスクリプトプロパティに保存し、コード内に直接記述しないようにしましょう。

投資自動化のメリットと実践のポイント

投資の自動化には様々なメリットがあります。まず、感情に左右されない客観的な判断ができること。設定した条件に基づいて機械的に通知が送られるため、市場の急変時にも冷静に対応できます。また、時間の節約も大きなメリットです。常に市場を監視する必要がなくなり、本業や他の活動に集中できます。

ただし、自動化にも注意点があります:

  • 過度な依存は禁物:自動化はあくまでツールです。最終的な投資判断は自分自身で行う必要があります。
  • 定期的な見直し:市場環境や投資戦略の変化に応じて、設定した閾値や監視銘柄を定期的に見直しましょう。
  • バックアップ体制:システム障害やAPI停止に備えて、手動でも確認できる体制を整えておきましょう。

フィンテックと共に進化する投資スタイル

Finance Experience Journalで紹介されている様々な体験談に触発されながら、自分だけの「フィンテック活用術」を試していくことで、投資がもっとクリエイティブで主体的なものになります。最初は小さな一歩から始めて、徐々に自動化の範囲を広げていくのがおすすめです。

例えば、株価アラートから始めて、次はポートフォリオのリバランス通知、さらには税金計算の自動化など、段階的にシステムを拡張していけます。プログラミングの知識が深まるにつれて、より複雑な投資戦略を実装することも可能になるでしょう。

まとめ:テクノロジーで拓く新しい投資の形

個人投資家がフィンテックを活用することで、従来はプロの投資家や機関投資家しか使えなかったような高度な投資手法が身近になってきています。APIやスクリプトを活用した自動化は、その第一歩です。

重要なのは、テクノロジーを「使う」だけでなく、少しだけ「作る」側に回ってみること。その体験を通じて、お金とテクノロジーの関係をより深く理解できるようになります。Finance Experience Journalでは、こうしたリアルな体験を共有しながら、みんなで学び合うコミュニティを目指しています。

ぜひ、あなたも自分なりのフィンテック活用術を試してみてください。そして、その体験を周りの人と共有していきましょう。一緒に、お金とテクノロジーの未来を楽しんでいきましょう!